つわり
吐きつわりの時期は?
生理開始(妊娠0週)から約14日後に排卵、排卵後から数えると6、7日程度で着床が始まり(妊娠2週)、着床終了までは12、13日程度を要します(妊娠3週)。そして、着床終了から10日程度(妊娠4週頃)で妊娠反応が出るようになります。
妊娠5週頃に、子宮内に胎嚢という赤ちゃんの袋が見える頃になると、「体がだるい」「眠い」等の妊娠の兆候があらわれてきます。この頃から、吐き気などを伴う「つわり」がスタートします。早い人は、4週頃から始まることもあります。
6週ごろには赤ちゃんの心拍も確認でき、中枢神経や心臓・肺・の形成も始まります。
胎盤の絨毛から分泌されるhCGホルモンや、エストロゲン、プロエストロゲン等のホルモン分泌が盛んになり、この活発なホルモン分泌がつわりに影響しています。
8~11週でつわりのピークを迎え、お腹のふくらみが目立ち始める16週頃には、つわりが落ち着いてきます。
つわりの種類と症状は?
つわりといえば、妊婦さん以外の人でも「吐く・吐き気がする」をイメージする人が多く、最も代表的なつわりの症状ですが、実は、つわりの症状は、「吐く・吐き気がする」だけではありません。
〔つわりの種類とその症状〕
・吐きつわり
つわりの症状として最も多い症状で、ずっと吐き気がおさまらず、時には吐いてしまったりと、一日中悩まされてしまいます。症状が酷くなると、食事や水分補給も難しくなり、「妊娠悪阻」になってしまい、受診して治療が必要になるケースもあります。
・食べつわり
空腹になることで吐き気をもよおしてしまうのが、「食べつわり」です。お腹がすくと、胃のムカムカや胸焼け、吐き気をもよおしますが、空腹を満たすことで症状が軽減します。
・においつわり
妊娠しホルモンバランスの目まぐるしい変化により、においに敏感になってしまいます。
特定のにおいにより、吐き気をもよおしてしまうのが、「においつわり」です。
その「特定のにおい」は個人差が大きいですが、誰もが臭いと感じるような生ゴミやタバコの煙などのにおいから、ご飯の炊けるにおい、食べ物、香水など、日常生活の身近なにおいに敏感になってしまうのが、つらいところです。どのにおいが苦手になってしまうかは、本当に個人差が大きく、また、1人目と2人目の妊娠でも苦手なにおいが違う、ということもあります。
・眠りつわり
睡眠が十分に取れていても、四六時中眠気を感じてしまうのが、「眠りつわり」。眠気とともに、体のだるさを感じることが多いです。
・よだれつわり
唾液の分泌量が多くなってしまうのが、「よだれつわり」。何とか飲み込むことで対処できることもあれば、飲み込むだけでは追いつかず、吐き出さずにはいられなくなってしまうこともあります。
- 吐きつわりの軽減方法
常にずっと気持ちが悪い状態の吐きつわりは、本当につらいです。
まずは、無理をせずに、食べられるときに、食べたいものを、こまめにとるように心がけましょう。栄養バランスも気になるでしょうが、無理なく食べられるものを食べましょう。
おすすめなのは、以下のものです。
・水分が多いもの
吐きつわりになってしまうと、なかなか食事が取れない上に吐いてしまうので、水分補給も不足しがちです。水分補給が疎かになると、脱水症状になってしまい、さらにつわりを悪化させてしまいます。
野菜ジュースやスープなどは、栄養補給もでき、おすすめです。
もし吐いてしまっても、水分はこまめにとりましょう。
・さっぱりしたもの
脂っこいものや味の濃いものは、においも強く、吐き気をもよおしやすいです。
吐きつわりの妊婦さんに好まれる、さっぱりした食べものをあげてみますと・・・
・果物(グレープフルーツ、イチゴ等)
・トマト、きゅうりなど、サラダ向けの野菜
・冷たい麺類
・プリン、ゼリー
・アイスクリーム、シャーベット
・おにぎり
どれも、あまりにおいもなく、サッと食べられるものばかりですね。
おにぎりは、炊きたてのご飯のにおいが苦手になった妊婦さんでも、わりと食べやすいようです。
・冷たいもの
温かいものは、においが立ちやすく、吐き気を誘発しやすいので、冷たいものがおすすめです。
スープなども、冷たくても美味しいもの(トマトを使ったガスパチョやコーンやじゃがいものポタージュなど)もあります。
お茶漬けも、冷やし茶漬けにするのも、おすすめです。
・つわりを軽減するビタミンB6を含む食べ物や生姜
ビタミンB6と生姜は、吐きつわりを軽減させる効果があるという研究結果が発表されています。
ビタミンB6を多く含む食べ物は、赤身の魚やお肉に多く含まれています。
食事で摂りづらい場合は、サプリメントで摂取するもの、ひとつの方法ですね。
吐いてしまった後は、口をゆすぎ、しばらく胃を落ち着かせてから、少しずつ水分を摂りましょう。吐いてしまった後に食べるものは、脂っこいものや刺激物は避け、消化のやさしいものを少しずつ食べるようにしましょう。
- 食べつわりの軽減方法
空腹の状態を解消することで症状が落ち着きますが、このタイプのつわりは、食べすぎに注意しましょう。食べすぎてしまうことで、体重が増えすぎてしまったり、栄養過多による、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病をにならないよう、気をつけなければなりません。
ポイントは、こまめに、少しずつ摂ることです。
また、間食として食べるものは、できるだけ低カロリーなものを選ぶと、体重管理もしやすいでしょう。
飴やガムは、口の中もすっきりし、空腹もまぎれるので、持ち歩くようにするといいでしょう。
朝の起床時に症状が出やすい妊婦さんが多いです。枕元に、個包装のクッキーやクラッカーなどと飲み物を準備しておくと、サッと食べられて症状も改善できます。
- においつわりの軽減方法
それまでは、多少いやでも我慢できたにおいから、全く気にならなかったはずのにおい、あるいは好きだったにおいまで、つわりのきっかけになってしまうのが、においつわり。
そのきっかけとなるにおいは、千差万別ですが、まずは苦手なにおいを特定し、避けることです。
マスクをして過ごしたり、料理や買い物でのにおいがダメになってしまったら、家族に交代をお願いしましょう。この時期は割り切って、お惣菜やネットスーパーなどを利用するのもいいでしょう。
気分が良くなる香りがあれば、いつも近くに置いて、リラックスするものおすすめです。
- 眠りつわりの軽減方法
日中でも強い眠気を感じ、体が重く感じる、眠りつわりです。
とにかく無理をしないことが大切です。眠気を感じたら、無理をせず横になりましょう。
仕事や家事などで、「眠いけど、我慢してがんばろう・・・」と無理をしても、効率が下がりますし、状況によっては危険なこともあります。とにかく、無理はしないことです。
特に、働く妊婦さんは、なかなか思ったように休憩を取れないこともあるかもしれません。
しかし、妊婦さんは、勤務時間の変更や軽減が法律で保障されています。職場の方々にも理解と協力を得ながら、赤ちゃんと自分の体を守りましょう。
- よだれつわりの軽減方法
何となくよだれがいつもより多いな、という程度から、飲み込むだけでは対応できず、常によだれが口から溢れそう、と、重い症状まで様々です。
我慢はせずに、できるだけよだれを吐き出すようにしましょう。
自宅であれば、コップなどをそばに置いておき、いつでも吐き出せるようにしましょう。
外出先では、直接口をつけられて中が透けないタイプの水筒を持ち歩き、水筒を飲むふりをしてコッソリ吐き出しましょう。
また、寝ている間にたくさん出ていて、朝起きたら枕がびしょびしょ・・という方もいます。
枕とその周辺は、バスタオルなどを多めに敷いておくといいでしょう。
よだれがたくさんでてしまうと、それだけ体内の水分も不足してしまいます。
こまめな水分補給もお忘れなく。
朝になると起こる 吐き気対策におすすめしたいことは?(特にどのつわりの種類に多いですか?)
朝がつらい妊婦さんは多いです。特に「食べつわり」の妊婦さんにとっては、最もつらい時間です。空腹時に吐き気を感じるのが「食べつわり」ですが、起床時は、長い時間空腹の状態となっていますので、その症状が強く出てしまいます。
朝起きてつらいつわりには、起きたらベッドから出る前に、まず何かを口に入れましょう。
寝る前に、枕元に個包装のお菓子などを準備しておくと、いいでしょう。
夜になると起こるつわりの吐き気対策におすすめしたいことは?(特にどのつわりの種類に多いですか?)
夜は、一日の疲れが出やすい時間です。日中の緊張がほぐれ、疲れとつわりがどっと・・・という妊婦さんもいるでしょう。
そんなときは、家事などはほどほどに切り上げ、無理せず早めに休みましょう。
また、「食べつわり」の妊婦さんは、夜中に空腹から吐き気に襲われてしまうこともあります。症状を無理せずに、夜食で空腹を満たして、休みましょう。
上記の朝のつわり対策と同様、枕元に夜食になるものを準備しておくといいでしょう。
ただ、気をつけたいのは、虫歯対策です。夜食をとった後に歯を磨くのがベストですが、それが難しい場合は、水などで流す、歯磨き効果のあるガムを一緒に準備しておく、などの対策もしておきましょう。
妊娠期は、いつもより虫歯になるリスクが高いといわれていますので、ご注意ください。
食後になると起こる吐き気対策とは?
特に「食べつわり」の妊婦さんは、食べて空腹が満たされると楽になるため、ついつい食べ過ぎてしまったことで、吐き気をもよおしてしまう、ということがあるようです。
食事の量は、「腹八分目」を十分に意識して、食べ過ぎないことです。
吐きつわりの原因となりやすいにおいはどんなものがありますか?
元々あまり良いにおいではない、タバコやゴミのにおいから、日常生活で当たり前の、ご飯の炊けるにおいや料理の過程で発生するにおいが、苦手になってしまった、という例は多いです。
それだけではなく、残念なことに、旦那さんのにおい、今まで好きだった香水などもダメになってしまった、というケースも少なくないです。出来たての惣菜やコーヒーのある、コンビニやスーパーが苦手な妊婦さんも多いですね。
その原因は、本当に人それぞれです。同じ妊婦さんでも、一人目と二人目の妊娠で、ダメだったにおいが違う、ということもある位、千差万別です。
つわりをどう乗り越えれば良いのか?
病気ではない、いつかは終わりがくるとは分かりつつも、吐き気やだるさなどのつわり症状と付き合い続けるのは、結構大変なものです。
つわりをうまく乗り越えるには、どのタイプのつわりでも、とにかく無理をしないことです。
そして、自分が出来るだけ楽に過ごせるように努めることです。
つわりの影響による、食事量の減少や偏食で、きちんと栄養が摂れているか心配になってしまうかもしれません。しかし、この時期の食事による胎児への影響は少ないので、心配せずにゆったりと過ごしてください。
気の置けない家族や友人とコミュニケーションをとったり、好きなことで息抜きをしたり、リラックスすることも、大変いいことです。
つわりは、ひとそれぞれ、様々な症状があります。自分なりの対処方法を見つけて、うまく付き合っていくことも大切です。
この時期に葉酸サプリをとらなければならない理由は?
上記の項目で、” この時期の食事による胎児への影響は少ない”と申し上げましたが、ひとつだけ気をつけてほしい栄養素があります。それは、「葉酸」です。
妊娠中に、この葉酸が不足してしまうと、赤ちゃんの脳や脊椎障害「神経管閉鎖障害」のリスクが高まってしまいます。そのため、葉酸は積極的に摂取する必要があります。
葉酸は、緑黄色野菜や大豆類、レバー等の食品に多く含まれますが、水溶性で加熱に弱く、その成分は料理により50%近くが失われてしまいます。
そこで、厚生労働省も、おおむね1日400μgの葉酸を、サプリメントなどの栄養補助食品により摂取することを推奨しています。
つわりで、食べられるものが限られてしまっている妊婦さんも、葉酸だけはしっかり摂取したいですね。
どんな成分の入った葉酸を飲むと、つわり改善につながりますか?
葉酸とビタミンB12は、共に造血作用やDNAの合成や細胞分裂の働きに深くかかわり、互いを助け合う関係にあります。ですから、葉酸と一緒にビタミンB16が配合されているものを選びましょう。
また、つわりの軽減にはビタミンB6が効果があるという報告があります。併せて、ビタミンB6の配合にも注目しましょう。
葉酸は、サプリメントで1日に400μgの摂取が推奨されています。
妊娠中のビタミンB12は1日1.4mg、ビタミンB6は1日2.8μg、1日に45mgの上限を超えない摂取量が推奨されています。
食事とのバランスを取りながら、過剰摂取にならないように気をつけましょう。
どんな時に吐き気がしますか?
吐きつわり、食べつわりのタイプの妊婦さんは、お腹がからっぽで空腹感の強い朝に、一番吐き気を感じるようです。
空腹時間が長くなる夜中も、吐き気に襲われやすくなります。
空腹になる時間を少なくする、空腹を感じる前に食べ物を口にできるようにしておくことが、つらくならないようにするポイントですね。
においつわりタイプの妊婦さんは、特定のにおいに反応してして吐き気がしてしまいます。
苦手なにおいを特定し、避けるようにしましょう。
吐きつわりのきっかけになりやすいことはなに?
これまでご説明してきたほかにも、入浴をきっかけに吐き気がしてしまった、歯磨きがきっかけになってしまった、というケースもあるようです。
入浴は、体が温まり血流が変化したことにより、起こってしまうようです。
歯磨きは、口の奥に歯ブラシを入れすぎてえづきやすくなったことや、歯磨き粉が苦手になってしまった、ということがきっかけになるようです。
どの程度吐いていたら妊娠悪阻?重症妊娠悪阻とはなにか?(体重の減少基準など)
妊娠悪阻は、つわりが重症化し、食事や水分が十分に摂れず、体重が減少し、脱水症状を起こしてしまった状態です。重症妊娠悪阻は、その状態が更に悪化し、入院治療が必要なこともあります。
以下の状態になってしまったら、妊娠悪阻の可能性が高いため、すぐに受診しましょう。
・吐く回数が1日3~4回以上
・水分も食事も摂れない
・体重が妊娠前の10%以上減ってしまった
・トイレの回数が減った
妊娠悪阻になってしまっても、母体からは赤ちゃんへの栄養供給が優先されるため、赤ちゃんへの影響は最小限に抑えられると考えられています。しかしながら、重症妊娠悪阻に進行してしまうと、ヴェルニッケ脳症になり後遺症を残してしまうこともありますので、早めの受診が大切です。
電車の中や職場での対策とは?
ここでも、とにかく無理をしないことです。
電車を利用しなければならない時は、
・混雑を避ける
できるだけ、混雑している時間を避け、席に座れる時間帯に乗りたいですね。
混雑していると押されたり転倒する危険だけでなく、人が多いので色んなにおいも溢れます。
また、吐き気などで途中下車を余儀なくされることもありますので、時間に余裕をもって出かけましょう。
・におい対策にマスクをする
つわりの妊婦さんには、必須アイテムですね。
・すぐに食べられるものを携帯する
食べつわりの妊婦さんは、サッと食べられるものを持ち歩きましょう。
飴やガムなど、バッグからサッと取り出せるところに入れておくと、いいですね。
・よだれ吐き用の水筒やタオルを携帯する
よだれつわりの妊婦さんは、よだれを吐き出せる水筒やタオルを持ち歩きましょう。
職場での対策も、ほぼ同様です。職場でも、無理をしない、母体優先、が基本です。
男女雇用機会均等法では、
妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が、その指導を守ることができるようにするために、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければならない
と定められています。
妊婦さんは、自身と赤ちゃんの健康を最優先する権利が、定められているのです。
職場の上司や同僚の理解を得ながら、無理なくお仕事ができるといいですね。